地球一周クルーズ「ピースボート」回想録 冷凍人間

百一日間の暑い、熱い、南周りクルーズの中で、たった三日だけ寒い寒い日があった。

南極に近いところを船で遊覧しており、一日に何度か氷河が見えるということで、北風がぴゅうぴゅうふく中、デッキで眺めていた。

この世の中には、大きくわけて4種類の人間がいる。
ポジ男、ネガ男、ポジ子とネガ子である。

大体想像がつくと思うが、ポジ男とは、ものごとを積極的に、ポジティブにとらえる男のことである。
ネガ男とは、その逆で、なんでも否定的に、ネガティブにとらえる男である。子がつくと、その女バージョンである。

 

氷河とは、日本に住んでいる者にとっては、一般的に珍しいものだろう。
百一日の中でたった三日しか見えるチャンスがないというのも、好奇心をそそられるところである。

「右舷側デッキにて氷河が見えます。みなさま、お急ぎデッキにてお楽しみください。」

と放送が流れたので、急いでデッキに走っていった。

「ほうー、あれが、氷河というものか。きれいだなあ。」

そんな風に思って、眺めていると、

「え、どれどれ、氷河って。あれ? なんだ、普通じゃん。なんか小さいね。っていうか、氷河って何?」

という、ネガ子の声が聞こえてくる。
ネガ子は、感動している人の熱い心をすぐに冷ましてしまうという、旅ではあまり出会いたくないタイプである。

 

私は、自分にかかわりのない人には、割合関心がないのだが、偶然となりに、よく話すかつさんという気さくでよく話すおじさんがいたので、ネガ子にも勉強になるだろうと思って、あまりにも単純な、しかし、今このときにはとても大切だと思われる質問をしてみた。

「かつさん、氷河って何ですか?」

まったく今の若いもんは、と言われるかなとちょっとびびっていたが、かつさんはいつもどおりにこにこと快く答えてくれた。

「氷河っていうものは、昔々、氷河期の頃からずっと残っている氷が、少しずつ溶けて、海に流れ出しているものだよ。氷の河って書くだろう。雨や雪が凍ったものではなくて、ずっと昔からあるものなんだよ。」

とてもわかりやすい説明で、きっと左どなりのネガ子達も納得しているだろうと思った。

かつさんは続ける。

「氷河の中には、ずっと昔の動物が凍ったまま保存されていたりするんだよ。昔のマンモスとかね。人間も発見されたよ。」

「人間もですか?」

驚いて聞き返した。昔の人間が氷河の中から発見されたなんて、今まで聞いたことがない。

「まあ、冷凍人間やな。」

冷凍人間。。
初めて聞いた。
人間のかたちはきれいに残っているのだろうか。
私の想像する原始人みたいな茶色の服を着て氷づけになっているのだろうか。
足をすべらせて、川にはまった人が、凍ったんだろうか。
私にも、ネガ子にも、想像力を働かせる、いい勉強になった。

よかったらシェアしてね!
目次
閉じる